2021年12月から約1年半に渡り、ハリマ産業は商工組合中央金庫と中小企業基盤整備機構の支援を受け、国際化・販路開拓の専門家である小野章子先生のご指導のもと「海外への販路拡大」に取り組んで参りました。途中、新型コロナウィルス感染拡大の影響でリモート会議への切り替えや渡航延期などが必要となりましたが、関係各位の尽力により、2023年6月、ついに社長の大久保がフランスへと渡航することが叶いました。帰国から一ヶ月が経ち、ハリマ産業にとって渡仏がどのようなものであったのか少し整理できたような気がしております。本号と次号の2回に渡ってお届けしたいと思います。お付き合い頂ければ幸いです。
- 新たな販路を求めて
皆さまもお感じになっているとおり、日本の住文化はすっかり欧風化しています。襖や障子にかわってドアやサッシが入り、畳はフローリングになりました。和室仕事に従事してきた我々にとって非常に厳しい時代です。リーマンショック以降は新築着工件数まで激減してしまい、耐えきれなくなった同業者が次々と倒産廃業に追い込まれました。関東には13社いた量産襖メーカーが今では3社となっております。それでもまだ既存住宅に入っている襖の張替や交換などの仕事が残っていたり、ドアの製造販売を強化するなどしてなんとか生き残ってきました。そんな毎日の中で極めて真っ当に販路拡大を考えた結果、多くの輸出企業がそうであるように、海外という無限の市場に興味が沸いたのでした。
- ゼロスタート
50年以上の実績がある弊社も海外ではまったくの新参者です。プロジェクト開始から暫くは未知の市場でゼロスタートを切ることの難しさに途方に暮れる毎日でした。しかし、小野先生の指導の下で自社分析と市場分析を摺り合わせた結果、「未知」というところにかえって希望を抱くようになりました。以前書かせて頂いた「冒険はできないけれど、挑戦はしたい」という言葉を思い出しました。国内市場では多くの事情都合が絡まって思うように身動きがとれないという本音があります。ゼロスタートを切れるというのは、ハリマ産業にとってこれ以上ない幸運です。ご支援を頂けたこと、心より感謝申し上げます。
- 商品選定の難しさ
障子や畳に比べて襖はほぼ無名であることが事前調査の段階で判明しました。いきなり襖を売るのは難しいだろうということで、商品開発が第一の課題となりました。検討の結果、どの国にもある一般的な家具やインテリア雑貨を通して襖のことを知ってもらうところから始めようということになり、襖と同じ材料・工法で製作するアートパネル(ふすまパネル)やキャビネットに挑戦しました。特に苦労したのは襖紙の選定です。現地の方の好みや価格帯(グレード)がさっぱり分からない中でデザインを決めなくてはならず、この作業は想像以上に大変なものとなりました。正直、この先の展開が読めない中で過剰な投資はできません。既存の技術や仕入れルートを活かせるもので商品を集めることにしました。結果として110点以上の商品サンプルをパリへ持ち込むことになりました。現在、当社の応接室は持ち帰ったサンプルで溢れかえっております。
- 強力な助っ人、現る
渡航予定日が近づいてくるなか、フランス現地で訪問を希望する先とのアポイントメントが必要な段階がやってきました。これはとても重要な仕事です。ハリマ産業に代わって現地の会社や店舗を訪問し、襖や和紙という難しい商品のPRをフランス語で行い、商談のアポイントメントを取得するというものです。自分たちで出来るとはとても思えない仕事でした。そこに登場したのが、矢島照子アドバイザーです。矢島アドバイザーは老舗デパート伊勢丹パリに長年勤め、パリから日本へ多くのブランドを紹介してこられた方です。現在は中小企業基盤整備機構のフランス現地アドバイザーとして、フランスで事業展開をする企業のサポートをされています。矢島アドバイザーはハリマ産業から提出する訪問希望リストや商材に基づき、現地との交渉を行ってくださいました。日本にいては分からない実情との摺り合わせが絶妙で、これ以上ない助っ人であると感じました。小野先生と矢島アドバイザーのご尽力により渡航前から予想以上の反響を頂くこととなり、もう「待ったなし!」の状況。ところが、ここにきてエアチケットが高騰するアクシデントが発生。今回の渡仏は3名の予定でしたが、社長単独で乗り込むこととなりました。30年ぶりの渡仏へ、社長大久保はついに覚悟を決めたのでした。